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法人(会社)の破産について

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ここまで一般の破産、「自己破産」といわれる個人破産について説明してきました。
しかし、中には会社を経営しており、その清算を考えている方も多いはずです。そこで以下では、会社、つまり法人の破産について、個人破産と比べながら説明をすることにします。

まず、法人の破産も裁判所に申し立てること、そのために、資料収集などの準備が必要なことなど、個人破産との共通点も多いですが、根本的な違いがあります。

個人破産との違い

1.個人の破産と違い、法人は破産すると法人格そのものが消滅してしまう

破産者が会社(法人)である場合には、原則として破産宣告とともに解散し、破産による清算が終了すれば法人格そのものが消滅します。つまり、個人は人生をやり直すために、破産するのですが、法人は清算し、消滅するために破産するのです。これが、最大の違いです。
個人=破産しても死亡(消滅)しない
法人=破産したら法人格が消滅する

2.法人の破産では全件破産管財人がつく

個人の破産の場合、破産する人の持つ財産に問題がなく、多少あった場合においても借金の額がごくわずかの場合、破産管財人がつかず同時廃止という手続きで終わることがあります。
それに対して、法人の破産では、必ず、破産管財人がつくのです。これも大きな特徴です。
(名古屋地方裁判所では、平成21年1月1日より、法人の同時廃止は認められない扱いになりました。)
個人=同時廃止(半数よりやや多い) 管財人がつく事件(半数よりやや少ない)
法人=管財人がつく事件(全ての事件)

法人の破産の特徴

1 法人破産のメリット

法人破産のメリットとして、税金や社会保険の未払い、損害賠償義務も消滅することがあげられます(例外も有り)。すなわち、以上のようなものは、個人破産の場合原則、破産しても支払い義務が残ってしまうのですが、法人破産の場合はこれらも消滅するのです。
理由は簡単です。法人は破産すると「消滅」してしまいますので、税金や社会保険の未払い、損害賠償義務などまでも消滅するのです。
これに対して個人は、破産後も人として生きていくわけですから、人として必ず払うべきものは、破産しても支払いが残るのです。

2 法人破産のデメリット

一方、法人破産のデメリットとして、自由財産がない(法人財産を生活費などに使えない)こと、費用が多くかかることがあります。
個人の場合、破産しても現金なら99万円まで、また、価値の低い車や解約しても戻り金の少ない生命保険は自由な財産として保有し続けられます。
個人の場合は、破産しても今後の人生があるわけで、そのための最低限のものは保有を許すということです。
しかし、法人の場合は、破産すると消滅するため、全部破産管財人によって処分されることになります。
また、費用については、弁護士費用及び裁判所などに支払う実費いずれも法人の場合の方が多くかかります。
すなわち、法人の破産は必ず破産管財人がつくため、個人破産で破産管財人がつかなかった時に比べ、破産管財人への支払いの分、実費が大きくなるのです。
 
さらに、個人の破産と法人の破産とでは弁護士費用も異なります。各事務所によって違いがありますが、弁護士費用は個人の破産であれば通常20~50万円が相場であるのに対し、法人の破産の場合は50~100万円以上と高い傾向にあります。これは、法人の規模によって財産の保全手続、売掛金の回収・確保の手続を講じること、従業員への説明会、解雇手続・離職手続を行うことなどが必要になってくるからです。しかし、保全回収した預貯金・売掛金等でまかなわれる場合がほとんどですので、ご安心下さい。
以上のように、法人の破産の場合、自由財産がないこと、費用がやや多めにかかることから財産の保全が必要など、手続的にはかなりやっかいです。

法人の破産特有の点

1.受任通知に関して

個人破産の場合は、債権者の取り立てを防ぎ、依頼者に一息ついて頂く為にも、必ず受任通知書(弁護士として破産業務を受けたので、これ以降一切の連絡は弁護士のみにしなさいという通知)を出します。
それに対し法人の場合、非常に緊急性が高く、また債権者に通知することで資産を奪いに来るなど、弊害が予想される場合、受任通知を出さずにいきなり破産申立、財産の保全申立、その他の保全手続をすることもあります。

2.売掛金の保全

法人の破産の場合、今後入金される売掛金の存在がしばしば見受けられます。
この売掛金を債権者に差し押さえられると有効に使えませんが、うまく保全できると破産の費用に充てることが出来、依頼者のコスト負担を楽に出来ます。
そこで、受任と並行し、売掛先に現金での支払いをお願いしたり、債権者が発見しづらい口座(例えば、新しく他銀行に開設した法人の預金口座)への入金、もしくは緊急避難的に社長個人の口座や代理人の預金口座への入金をお願いすることもあります(繰り返しになりますが、法人破産では自由財産がない以上、たとえ個人の口座に入っても、社長やその家族の為に使えるわけではありません)。

3.債権者の把握

法人では、債権者が非常に多く、その把握は容易ではありません。つまり法人の場合、破産をすれば金融機関の債務だけではなく、買掛金・賃料・税金・社会保険料など一切が消滅しますので、依頼者が債務と思いにくいものまで、債権者として聴取しなければいけません。

4.預金の引き出し・口座の変更

上記の売掛金同様、会社の預金もきちんと引き出し、保全をしておきたいものです。
これも保全をすれば、費用に充当するという有効な使い方が出来るからです。
引き出した上で、代理人弁護士が現金もしくは預り金口座で保管します。
但し、受任通知を発送した後は、法人名で口座を新設することは無理なことも多いことを予め認識しておきましょう。
自由財産がない法人の破産ですから、このお金も生活費に使えないことは当然です。

5.出資金

法人が信用金庫や信用組合と取引がある場合、少額の出資金を預けていることになります。
相手先が債権者の場合、この出資金は債務と相殺され引き出せませんが、そうでない場合は、売掛金や預金と同様の手段を講じ、費用の節約を図ることになります。

6.賃借物件の処理

個人破産ならば、破産しても生活がありますので、借りている部屋はそのまま使い続けられます。
法人破産の場合、法人は消滅しますので、借りている物件はオーナーに返す必要があります。
預けている保証金が滞納している賃料や原状回復費用(リフォーム代)より小さければ、相殺され戻ってきませんが、上回っている場合にはオーナーから差額を返してもらうことになります。
このお金の取り扱いは売掛金や預金などと一緒です(費用に充てるということです。
尚、費用を支払っても更に法人にお金が残る場合には、破産管財人に引き継ぐことになります)。
ここで、たまにあるのが、社長が会社名義で居住場所を借りている場合です。
破産後も同じ場所に社長が住みたい場合、社長個人は生きていく存在ですから、居住自体は可能です。
しかし、法人は消滅してしまう為、法人としての借り上げ契約は消滅させなければいけません。
すなわち、法人として納めていた保証金や敷金は一度破産手続の流れで処理され、社長個人は新たに敷金を入れ、個人として賃貸借契約を結ぶ必要があります。

7.従業員の解雇

破産をする場合は、いずれは事業を廃止することになりますので、従業員との雇用契約の必要はありません。また、破産の場合は従業員の解雇と同時期に破産開始申立を行うのが一般的です。なぜなら、雇用契約を継続していれば賃金が発生しますし、破産管財人が解雇した場合は解雇予告手当の法的な問題などがあるためです。
ただし、従業員を解雇するにあたっては、破産申立の事実だけでなく、従業員の未払い給料や退職金がどうなるか、雇用保険・社会保険の手続をどうするかなどの説明が必要ですが、同時に破産申立の事実も他の債権者へ伝わってしまうことになります。
そのため、従業員の解雇の際は、弁護士に解雇の時期と方法等を相談したうえ、慎重に行う必要があります。
なお、破産手続において管財業務を行うなかで元従業員の協力が必要な場合には、破産管財人が改めて一定期間その元従業員を雇用するということもあります。
当事務所では、破産手続の中でも一番やっかいなこの従業員への説明と解雇・離職手続きを代理人として処理しますので、安心してご相談下さい。

8.従業員の未払い給料、退職金

破産手続において、未払給料(開始決定前3か月分の従業員)・退職金(退職前3か月間の給料相当額)は、財団債権となるので、一般の破産債権に対する配当手続きを待たず、破産管財人によって随時弁済されます。
それ以外の未払給料(開始決定の3か月以上前の給料等)や退職金(給料3か月分を超える分)は優先的破産債権となり、他の財団債権(税金など色々なものがあります)の弁済後、配当手続きによって配当されます。
なお、独立行政法人労働者健康福祉機構の「未払賃金の立替払制度」について9を参照して下さい。
これらの手続きを従業員に説明した上で、解雇予告手当と直近の未払給与の支払の実行をするかとどうかについて慎重な判断が求められますので、弁護士に相談したうえで行う必要があります。ご注意下さい。

9.未払い賃金の立替制度

未払賃金の立替払制度とは、企業が倒産したために賃金が未払のまま退職を余儀なくされた労働者に対し、未払賃金の一部を独立行政法人労働者健康福祉機構が事業主に代わって立替払いする制度です。  
●立替払いの対象となる賃金
・労働者の未払賃金(労働者でない役員の報酬は対象外)
 ・退職日の6か月前からの立替請求日の前日までに支払日が到来している未払賃金
 ・毎月の給料と退職金(ボーナスは対象外)
●立替払いの額
未払賃金総額の8割(ただし、退職日の年齢により限度額が異なる)
●方法
破産手続開始後、破産管財人の証明印を貰い、所定の請求書で独立行政法人労働者健康福祉機構に対して請求手続を行う。
未払賃金の立替払制度の詳細はこちらをご覧下さい。

10.従業員の雇用保険、社会保険の手続

破産手続の申立の際、従業員を解雇した場合、従業員は「会社都合退職」となるため翌日からの失業保険給付を受けることが可能となりますが、社会保険の被保険者である資格は、解雇の翌日から喪失します。したがって、会社は解雇にあたり、速やかに従業員に対して以下の2点をする必要があります。
①離職票を交付(失業保険給付を受けられるようにするため)
②従業員の被保険者証カード・被扶養者用カードを回収し、日本年金機構へ提出
また、従業員は、社会保険を任意継続するか国民健康保険に切り替え(加入)手続を行う必要があります。
当事務所ではこれらの処理についても代理して行うこともしますので、安心してご相談下さい。

11.役員報酬

従業員の給与と違い、社長や親族の役員が報酬を受け取ることは、多くの場合、不当と評価されます。
会社破産の場合、債権者の支払を止めるわけですから、そのような状況下で、経営者一族などへの役員報酬の支払も同様に止めることになります。

12.破産により役員は会社との委任契約が終了します。

破産手続開始決定が出ると、代表者や取締役らの役員と会社間の委任契約が終了し、(代表)取締役ではなくなります。
開始決定により、それまでは代表者が有していた会社の財産についての管理処分権は、破産管財人に帰属します。よって以後は破産管財人が財産を管理することになります。
役員らには、破産管財人に対して説明義務があります。

13.取締役の一人が社外の取引先の役員などの事由で破産申立の取締役会を開くことができない場合

破産手続申立には、裁判所に、破産申立を決議した「取締役会議事録」または「全取締役全員の意見一致を証する書面」を提出する必要があります。しかし、様々な事情で取締役全員の同意を得ることが難しい場合があります。(例えば、取締役の一人が社外の取引先の役員や従業員なので事前に破産申立の説明をすることが難しい、取締役の一人が海外にいる等)
その場合には、「準自己破産」という手段を用いて取締役の一人(例えば、代表取締役の社長)だけで、会社の破産手続の申立が可能です。
従って、準自己破産の場合は破産原因(債務超過、支払不能)の事実があることの疎明さえできれば可能なので、取締役全員の同意が得られないからといって破産手続の開始申立ができない訳ではありません。


弁護士法人名古屋総合法律事務所の債務整理相談

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