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クレジットカード等の借入で首が回らなくなってしまった。住宅ローンの返済もある。 でもそんなときでも個人再生手続を使えば、債務の返済額を減らすことがきる。住宅資金特別条項を使えば、マイホームも残すことができる。個人再生は何と素晴らしい手続きか、マイホームがある場合は個人再生一択!!! ……と、飛びついてもよいのでしょうか。
個人再生手続終了後は、個人再生手続において減額した債務を、原則3年で返済しきることになります。その返済計画のことを、「再生計画」と言います。弁護士と契約を締結する前に、再生計画がどのようなものになるのかの見通しを立てて、再生計画どおりの弁済ができるかどうかを検討する必要があります。 ここにAさんという人物がいたとします。Aさんはマイホームを持っていますが、まだ住宅ローンの返済は終わっていません。住宅ローンを除いた債務総額が2500万円で、全てクレジットカード・消費者金融の借入です。ローンは月額8万円です。 Aさんは、どのような再生計画になるでしょうか。
個人再生においては、債務額が1500万円を超え3000万円以下の場合、弁済額は300万円になります(民事再生法231条2項4号)。 現時点で債務総額が2500万円だということは、個人再生手続申立てをする半年後には、遅延損害金が加わっていることになります。遅延損害金の利率は債権者によって異なりますが、仮に2割だとすると、半年で弁済しなければならない債務の額は2750万円になります。 いずれにせよ3000万円以下なので、弁済額は300万円となる可能性が高いでしょう。 また、個人再生の場合は、清算価値保障原則にも注意が必要ですが、これはAさんはクリアできているとします。
先述のとおり、原則3年で減額した債務を支払うことになるので、Aさんが月額の返済額は、8万3000円前後になります(3,000,000÷36=83333.333・・・)。 毎月遅滞なく不足なく支払うことが必要になるので、月額8万4000円は支払えるだけの余裕があった方が良いでしょう。 Aさんの再生計画は、月額8万3000円から8万4000円を支払うものになる可能性が高いと言えます。
Aさんが再生計画どおりの支払いができるかどうかの判断において非常に重要となるのは、家計の状況を把握することです。 Aさんのある月の家計の状況をまとめると、下記のようになりました。
収入 | 支出 |
---|---|
Aさんの給与(手取り) 200,000 |
住宅ローン 80,000 |
配偶者の給与(手取り) 100,000 |
光熱費 30,000 |
前月繰越 25,000 |
電話料金 30,000 |
– – |
食費 40,000 |
– – |
医療費 3,000 |
– – |
被服費 5,000 |
– – |
教育費(学費) 110,000 |
– – |
交際費 5,000 |
– – |
翌月繰越 22,000 |
収入合計 325,000 |
支出合計 325,000 |
当然ですが、このAさんの家計状況は完全なる創作です。
翌月の繰越が2万2000円しかありません。これでは、月額8万4000円の弁済を毎月していくのは難しいと言えます。 節約して減らせる出費があればよいのですが、住宅ローン代や教育費は毎月固定でかかるものであり、また食費を減らすことも現実的ではありません。 残念ながら、Aさんが個人再生手続をしても、再生計画どおりの弁済をすることは難しいと言わざるを得えません。
3年での弁済が難しいことを説明し、4年や5年での弁済とする計画を認めてもらえるよう裁判所に上申することもありますが、認められるかどうかは不明です。 また、Aさんの場合、4年の弁済でも月額6万2500円、5年の弁済でも月額5万円の弁済計画になりますので、結局難しいと言えます。
個人再生においては、再生計画案を申立人が提出し、債権者が多数決で可決するか否かを決議し、そのあとで、裁判所が再生計画案を認可します。しかし、再生計画が遂行される見込みがないときは、裁判所は再生計画不認可の決定をします(民事再生法174条2項2号)。 個人再生手続の申立てにおいて、裁判所には家計の状況を記載した書面を提出します。その書面に照らし、裁判所が、再生計画が遂行される見込みがあるかを判断した結果、見込みがないとされれば再生計画は不認可になってしまいます。そうすると、裁判官の判断次第では、破産開始手続決定がされることがあります。
再生計画が認可されても、再生計画どおりの弁済ができなくなり、結局破産を申立てることが必要になる可能性があります。
個人再生手続の申立てを弁護士に委任する前に、再生計画の見通しを立てておかなければ、再生計画が認可されても結局首が回らなくなり、破産を申立て、マイホームを手放さなくてはならなくなる可能性があります。 誰もが現状の生活を維持しつつ、債務の弁済額を減らすことができるわけではありません。計画どおりの弁済をすることが難しいのであれば、破産手続の検討をすることも必要です。
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